ミュンヘン

テアトル8,評価★★★☆
スピルバーグらしい暴力と、冷戦を初めとする70年代初頭の空気にあふれた映画であった。
様々な政界情勢を基に、人間ドラマを描いているのだが、思ったよりも人間を描いていた為、歴史を詳しく知らなくても楽しめるものかと。もちろん、その知識があれば更に楽しめるのだろうけど。
人を殺す事と命の営み、そして暗殺から生まれる目に見えない恐怖と、長めの映画でありながら、心情の変化が面白く一気に観られたかと。<以下核心メモ>
まず、オリンピック関係者の殺害が冒頭で見せなかった為、物語のきっかけでしか無いのかと思っていたら、その経過が映画の中で散りばめられ、最後の空港での殺害がラストでの任務完了後の妻とのセックスのシーンにてフラッシュバックされたのが興味深い。アヴナーが人間性を保つ要素となる娘の出産とつながる生命の象徴といったところだろうか。
それに反して、仲間を殺した女殺し屋への復讐のシーンでは、その裸体の美しさとのコントラストにて死のあっけなさを表していたか。
隠れ家にて、自分達が今までに爆弾を仕掛けるのに使った、電話、テレビやベッドをばらして、ついにはクローゼットで寝る姿に、暗殺に対する報復の怖さと、それを繰り返す虚しさがあったかと。