ユナイテッド93

テアトル7、評価★★★
結末が分かっているし、ラストシーンも大体想像がつくだけに観終わったあとテンション下がりそうだなーとは思っていたけど、意外にも映画としてキレイに観られた。登場する人間の誰かが中心として物語を引っ張っていくわけでもなく、淡々と事象を追いかけていくだけなのだが、それを描く突き放した視点が見事。緊迫感を高めようとイタズラに時刻表示などを入れなかった事も大きいだろうけど。そういうドライな視点にして、製作者からのメッセージが見えてこないのは十分意図した事なんだろうな。
ユナイテッド93が実際にハイジャックされてからのシークエンスはかなり後半になってからなのだが、それまでの他のハイジャックを長く見せる事で、以後の乗客達の動きに繋がる構成は見事。<以下核心メモ>
冒頭がハイジャック犯の祈りから始まって、終始その犯人達の動揺も描いているのが興味深かった。完全な悪では無く、弱みを持った人間が起こした最大の悪事という点が強調されているのは、ある意味怖い事かと。
前半は、管制官と軍の混乱振りがメインとなっているが、結局最終的には大統領の撃墜命令が、誤爆を恐れて実行されなかった最後のテロップと重なって面白い。しかも、WTCへの攻撃の一報を知るのがCNNのニュースから、というのが皮肉なところか。
ハイジャック後のユナイテッド93の内部の様子は、リサーチの賜物なのだろうが、実にドラマチックな展開であった。機内の電話でなんとか外部に連絡すると共に、外の情報を得る様子が緊迫感あふれるもので。その外部からの情報があったからこそ、乗客たちはハイジャック犯への攻撃の意思を固めたのだろう。しかも、ハイジャック犯の自爆攻撃を防ぐ以上に、自分達が生き延びる為に行動を起こしていたのが痛々しい限りで。
ラストショットは予想していた通り、コクピットの窓から見える墜落現場の地面。とは言え、乗客をメインに据えている以上、彼らにはこの後の物語が無いのだから、選択肢はないでしょう。