父親たちの星条旗

テアトル8、評価★★★★
クリント・イーストウッドの描く戦争映画。でも、硫黄島の戦い自体では無く、その戦いで英雄にされてしまった者達の物語として描かれている。戦争でのヒーローとは何か、という問いかけをするにあたって、戦闘中と英雄として祭上げられるキャンペーン、そして現代とシーンが飛ぶので整理には困るのだが、その切り替えが「衛生兵!!」の呼び声や爆発の明かりに想起されるものなどが印象的。
画面のトーンは落ち着いた感じでフィルムの粒子感も相俟って、「許されざる者」の様なイーストウッドらしい落ち着いた雰囲気に。*1特に、エンドロールに入る音楽はイーストウッドらしさが感じられるかと。
なお、この映画と対になる形で日本側の視点を描いた「硫黄島からの手紙」が、同じイーストウッド監督で、日本の俳優を使って撮られているので、こちらも期待したい。<以下核心メモ>
物語の発端は、硫黄島の擂鉢山に星条旗を掲げる時の写真という事になるのだが、実はその写真は、軍のトップの思惑にて1本目の代わりとして掲げられた時のものなのに、その写真のほうが印象的に撮られてしまったために、それの場にいた者がプロパガンダとして使われてしまう真実。で、更にその6人に入ってはいなかったのに、1本目の旗を掲げた事で間違われてしまった兵士の悲劇も加わるのが興味深い。
実際、その星条旗が掲げられた時点で戦いが終わったものかと思っていたら、その後も掃討戦が続くわけで、その緊張感と、キャンペーンでヒーローとなった兵士を歓迎するアメリカ国民との姿と重なって奇妙な感じを覚える。
戦争でのヒーローとは何か、という事と、望まずにそうなってしまった者たちの物語として、面白くは観られた。

*1:ミリオンダラー・ベイビー」の様な衝撃感がある、という訳では無い、という事で