硫黄島からの手紙

テアトル6、評価★★★★
イーストウッドが撮りたかった日本側からの硫黄島。ただ、画面の雰囲気はイーストウッドのそれよりは、日本映画のものに近い感じも。まぁ、「父親たちの星条旗」がスター映画では無いのに対して、こっちは渡辺謙が前面に出てたって事もあるけど。
父親たちの星条旗」と同様に、現代の事象から過去に遡るという展開なのだが、こちらは時間を行き来するシチュエーションが無いので、すんなりと観る事ができる。まぁ、それが敗北への流れを示しているようで悲しくなるのだが。
硫黄島の戦いというものを知るにはいい映画に仕上がっていると思う。更に、あの時代の戦争への各人の思想も含めてあそこまでアメリカの人たちに的確に描かれたというのは、またまた日本映画界としては*1、地団駄を踏むべきなんだろうけど。<以下核心メモ>
冒頭の映像が擂鉢山の上の慰霊碑から始まっており、「父親達の星条旗」の最後となる擂鉢山頂の国旗掲揚記念碑と繋がる事になり製作者の意図が明確になっていいて面白い。
栗林中将の赴任から物語が動くわけだが、米軍の侵攻が考えられる硫黄島に対しての防戦の準備からその戦いを丁寧に描いていて面白い。上陸する米兵を浜に引き寄せての集中攻撃に勝機がある様に見えるのに、そこからは大本営から孤立した為に敗退の一方という展開が泣ける。もちろん、北に逃げていったとしても、最後の突撃まではなんとか戦い抜こうとする人達のドラマに引き込まれる。
栗林中将以外に、バロン西、西郷、清水の3人がメインとして物語を引っ張るのだが、それぞれの生きてきた道筋のドラマへの組み込ませかたが巧みで、無理な感動を引き出させず心に響いてくる。あと、「父親達の星条旗」では日本兵が全然見えずに不気味なだけだったけど、この映画では逆に捕虜となったサムの姿を描いたり、投降した清水を撃ち殺す米兵がいたりと、戦っている敵の人間性を前面に出して、登場人物の心理に影響を与えていたかと。
前面的には出ていないけど、「父親達の星条旗」と対になるシチュエーションとしては、擂鉢山頂の記念碑、衛生兵への攻撃の指示、上陸時の戦闘までの間、擂鉢山での自決、イギーヘのリンチといったところか。もっとも、先の映画は戦闘の後半は殆ど描かれていなかったので、前半のシチュエーションがメインになるのだが。

*1:ラストサムライ」「SAYURI」に次いでって意味で。…そういやどちらも謙さん出演だよ…。