イングロリアス・バスターズ

テアトル2、評価★★★★
タランティーノ監督の最新作。「途中退場したら返金」という妙なキャンペーンをやっているけど、2時間32分という少し長めの上映時間も全く気にならない展開だった。と言っても、ノンストップムービーというわけでなく、シーンの見せ方は落ち着いたもので。
ナチを潰すという目的で"バスターズ"と呼ばれる部隊が潜入して・・・という話なのだが、ユダヤ人少女の復讐劇は直接交わるものでは無いのは、予告のイメージからすれば肩透かし。もっとも、この映画の中で描かれるナチはあくまでも、判りやすい敵としての象徴的なものであり、特にその制服は最も象徴として判りやすいものとして扱っていたのが面白い。
しかし、ナチの物語以上に感じるのはタランティーノの映画への愛。劇中のファクターとして映画が使われているのは勿論の事、描き方はニヤニヤしてしまうもので。
主演のブラッド・ピットは一応主演。その胡散臭い存在感は見事・・・って、「頭の皮を100枚剥いでこい!!」ってどんな命令だよw共演の中で、ダイアン・クルーガーはやはりいい女だよなぁ〜と観る。特に傷を負って血の付いた姿とか良すぎる。後は、復讐するユダヤ人を演じたメラニー・ロランの美しさと、ナチの大佐を演じたクリトフ・ヴァルツの存在感と表現は、どちらも素晴らしく映画を盛り上げていたと思える。
タランティーノらしいトリッキーさはあるけども、思った以上に素直に楽しめた映画だったかと。<以下核心メモ>
報われない復讐劇というところか、登場人物が殆ど呆気なく死んでしまうのは驚き。
スパイの女優ハマーシュマルクが首を絞められ、復讐を為したショシャナが邪魔をして撃ち殺した筈のフレデリックに撃たれたり・・・という救いの無い展開が続くと思ったら、ヒトラーまでがバスターズの面子の働きとショシュナの作った罠に落ちて死ぬ事になるとは・・・。ヒトラーを復讐と暗殺で殺してしまうという展開は、戦争映画という体裁を取りながらも自分の映画を貫いたタランティーノ故の演出なんだろう、と。
そんな中、ヒトラー殺害を見逃し連合軍に投降しようとしたナチの大佐ハンスに対して、アルドが制服を脱いでも残るナチの証として額にハーケンクロイツをナイフで刻むシーンがラストなのが面白く、実にシュール。勿論、途中で同様に額にマークのみ刻んで逃がした兵士の話を挟んだ事が有効に働いている構成も見事。