パブリック・エネミーズ

テアトル3、評価★★★☆
大恐慌後のアメリカで、民衆の人気を得た銀行強盗であるジョン・デリンジャーの物語なのだが、それと対する捜査側がFBIの前身である捜査局であり、エドガー・フーバーも出てくる辺りに時代の面白さが出ている。
作品全体としては、マイケル・マンらしい男っぷりの強い映画で、それをジョニー・デップの演技が更に強調している感じ。ただ、マン特有の手持ちカメラによる撮影が今回はちょっとうるさく感じたところもあったのは残念。それだけ'30年代を見事に表現していたと思えたわけで。
事実を元にした映画であり結末の悲劇性は判っているのだけど、予告からもあった銀行強盗のシーンは監督の演出もあって素直にカッコいい。劇中でも「1分40秒で」という話も挙がる様に、テンポ良く見せてるという事でも。まぁ、監督が同じという事で「ヒート」との連想は避けられないところなんだけどね。
冒頭の展開あたりが唐突なところもありキャラが把握し難かったけど、2時間半弱という時間を感じさせないテンポのドラマであった。<以下核心メモ>
ジョンがビリーを口説く際の強引さと勢いは演出としても力があって面白い。その勢いだけの愛かと思ったものが、共に未来に生き様とするまでの心の動きは素直に惹かれる。思った以上に2人の直接的な演出というのは少なかったのに。
そして、映画館を出た跡に頭部を撃たれてほぼ即死であったジョンのかすかな伝言を、先に捕まって刑務所にいたビリーに届けるというラストは心地良く泣ける。その言葉が、途中に流れた「バイバイ、ブラックバード」という歌詞を有効に使った事は勿論、それを伝えたのが宿敵となるパーヴィスでなく、その手助けに来たウィンステッドだったというのは面白い。ジョンとパーヴィスは理解する要素は無かった、という事になる訳だし。