探偵はBARにいる

テアトル3、評価★★★★★
小説"ススキノ探偵シリーズ"の一編からの映画化だけど、原作は未読。主人公が"俺"で表され、名前が出てこないで一人称視点の原作だと思うが、この映画自体も見事な一人称に。"俺"のモノローグが被さる事以上に、物語の進展が"俺"の視点から外れずに観客もほぼ同じ感覚で観られる…という事で。
何はともあれ面白い!トリックも物語も丁寧で、「下手すりゃ2時間ドラマ並?」と冒頭で一瞬感じたのも、終ってみれば十分に満足できる映画だったという事で。舞台を札幌、しかもゴミゴミしたすすきのをメインとして進められる物語は、とても新鮮。でも、さおりの経営するクラブが「プライド」と同じだったのは気になって仕方が無かったが。
"俺"を演じたのが大泉洋で、冒頭で映画主演向きでないかと思ったけど、モノローグが重なる辺りからは違和感無し。あれだけ無茶なキャラを描けるのも大泉洋だからだろう、と。相棒は松田龍平で、予告等からカッコ悪くダサイキャラを演じてると期待していた…いや、その通りだったのだけど、その分時折見せるカッコ良さが際立っちゃってもうw他の脇を固める役者陣も豪華なんだけど、やっぱり田口トモロヲは男色の役なのか、と納得。*1
あと、言うまでも無く"俺"の居座ってるバーが魅力的。無言で邪魔にならない存在感を持つマスターは勿論、酒を飲まない自分でもグラスから石を取り出して打つオセロは真似してみたいと思わせる。
この映画のパンフレットは、バーのマッチを模したカバー付きで、本体の表紙がマッチが描かれるという凝った作りなんだけど、久々に扱いにこまるパンフレットだな。<以下核心メモ>
物語の構造は勿論だけど、この映画で最大のトリックとなるのが"依頼人で電話をかけてきたコンドウキョウコガ誰なのか?"。放火事件の被害者である"近藤京子"の異父妹で迷わせるところもあったけど、正体は手堅く小雪の演じる沙織。
夫である霧島敏夫の仇を討つ為に、敵の懐に入り込んだものが逆に動きづらくなった為に"俺"に依頼したといういきさつ。最後に、結婚式で関西裏社会の黒幕と弁護士を撃ち殺して本懐を遂げ自らも自決…となるのだけども、このウエディングドレスでベレッタをぶっ放す小雪の美しさにはただひたすら目を奪われるばかり。何故ベレッタ?という疑問もあるけど、装填数が多いからあんだけぶっ放すなら必要だねwまぁ、最後の自決では撃ち尽くした事を示唆する意味でスライドストップしてほしかったけど…。
この式場の惨劇で"俺"は沙織の作戦で小樽に居させられてしまうのだけど、この辺りの一人称的な演出の徹底は見事。そして、状況に気付いて急いで電車で戻る"俺"が電車で「スピードあげてくれよ」と泣き崩れる姿が凄く印象的。

*1:そういや、「御法度」で男色な役を演じてたけど、相手が松田龍平だったよなぁ、と。