ももへの手紙

フォーラム4、評価★★★★
人狼」の沖浦啓之が脚本と監督をしたこの作品。先の作品とは全く異なる明るい作品で、観終わった後に素直に感じるものがあった。
プロダクションIGらしい画の素晴らしさには、なんかもの凄く安心して観る事はできた。作画がジブリ的かな?と思うところもあったが、キャラデザインと作監を務めた安藤雅司ジブリ出身の人でしたか。そうは言っても、あくまでもIGの画なんだけどね。
父を亡くしたももが母親と瀬戸内海の島に来、そこで妖怪達と出会い・・・というものであるのだが、妖怪的な世界では無く、あくまでも島での生活を基本とした物語であり、人の関わりを描いたものという事で、地に足を付けた感じで観る事ができると思う。それは、登場する妖怪の使命にも関わる事で、ももの家族を描くには必然というもので。
しかし、もものキャラクターが表情やアクションが豊かで実に可愛い。小学6年という年齢で、子供だけども陽太の妹の海美の様に子供扱いするほどでも無い・・・という年頃の可愛さというか快活さというか。美山加恋の声も合っていたし。声といえば、母親の優香は時々気にはなったけど当初の想像よりは普通にに聞けたか。妖怪のうち1人を演じた西田敏行は想像以上に安定していたね。
目立つ様な派手さは無いけど、確実な表現と、明確なメッセージのある物語で誰にでも楽しめる作品なのではないかと思う。<以下核心メモ>
三妖怪の役割は、天からももと母親を見守る事が出来るまで"見守り組"として傍に居て、その様子を報告するというもの。でも、元は力を抑えられた妖怪達だったのだから、素直には従わないというもの。何度止められても、食べ物等を盗んだりもするわけで。
そんな妖怪のした事の為に、ももは母親に叱られ喧嘩するのだが、これは父が死ぬ前に喧嘩してしまったのと同様に。そんな折に台風が襲来し、心配しももを探しに出た母親が喘息が酷くなり・・・というのがクライマックスの展開。台風で隣りの島への往診から戻れなかった医者を連れてくる為に嵐に荒れる橋を進むももを助けたのが、自分達の責任も感じた三妖怪と地元の妖怪達であり、風雨を避けるドームを作ってもも達を助けるというもので、異様だけどもなんか泣けてくるもの。
役目を終えた三妖怪が"そら"へ戻るのだが、その後死んだ父から届けられた手紙で、死ぬ前に「ももへ」という一言だけで書けなかった想いをぶっきらぼうでも、2人に伝わるくだりには素直に気持ちが入る。