外事警察 その男に騙されるな

テアトル7、評価★★★★
日本の国外に関する事件に関わる"外事警察"を描いた映画。ドラマからの映画化となるけど、ドラマは未見。
全体的に暗いトーンで、テレビドラマの延長の様な雰囲気の画面で物語は進む。冒頭に各キャラクターの名前がテロップで出るあたりにもテレビドラマ的な感覚が。
主人公として渡部篤郎が演じる住本が据えられているけど、あくまでも事件解決の展開を進める要素としての役割が大きく、物語としての主人公は解決の為に協力者とされる真木よう子演じる果織となるのだろうか。その果織も住本らにつけこまれる過去があるというのがポイント。
物語の大きな筋は日本で核爆弾が作られた可能性があり・・・というもので、朝鮮半島の情勢も含めた事で韓国でのシーンも多いけど、比較的穏やかに事件が進むというもの。人間同士の騙しあいや、国家間の腹の探り合いが大きな要素として見せているので、実に緊張感が高い演出。そんな緊張感にピッタリの渡部篤郎の演技なんだけど、時折見せる笑顔が嘘でも素敵だから堪らない。
核を扱った事で物語の要素が大きくなってるけど、緊張感のある日本のドラマとして楽しめた。先の震災後を踏まえて撮った物語としても、大きな意味はあると思う。<以下核心メモ>
果織の夫は北朝鮮工作員であり、日本で核爆弾の天下装置を得る為に果織と偽りの夫婦となり、工作を進めていたもの。そして、果織も幼い頃に捨てられて苦労して借金を抱え、若くして生んだ娘を生活苦の為に捨てようとしていたりと、心の闇を持つ女で。そんな環境で過去を持った果織だからこそ、外事警察の住本らに捜査の為の協力者として使われるのだが。
そして、もう1人のキーパーソンとして出てくるのが、在日二世の原子力科学者である徐。実は、彼が祖国を憎むあまりに、戦争を起こさせてその国を潰す、そのためにソウルで核爆発を起こす・・・という明確な目的があったというもの。利用していたと思われていたテロのメンバーがソウルの警察に殺されたとしても、その目的を為そうとするもの。そんな彼が起動した核爆弾を止めるキーが、彼が日本を離れる前に妻と娘が3人で桜の下で撮った写真の日付・・・というところで、実は目的に囚われていながらも、妻と子供を忘れない人ではあったのだろう、と。
そして、その科学者の徐の行方知れずになっていた娘が、住本の協力者となった果織であり、DNA鑑定でも一致が・・・という事で、住本の部下の松沢は果織に事実を告げると共に徐からの手紙を読ませ、そして核爆弾のカウントダウンが進む中で果織が徐に説得をするという流れに。・・・しかし、最後に内閣官房費から出たお金を受け取りつつ果織がDNA鑑定が真実だったのか問いかける。そして、住本が鑑定書を焼き、それを偽造したと思われる男に金を置いていく・・・というラスト。ここにきて、派手な立ち回りも無く、外事警察に使われる果織の物語なんだろう・・・というのが、完全に住本の謀の物語という事でストンと終わるのが気持ちいい。
ただ、ラストで小さい頃に捨てられたショックで失語症になっていた娘が、拉致されてたのが母親の果織と再会して言葉を取り戻して「ママ」と言うのだが、3回言うのは多かったと思うのだが。