宇宙刑事ギャバン THE MOVIE

テアトル6、評価★★★
宇宙刑事ギャバン」の30周年を踏まえての単独映画作品。先に、「ゴーカイジャー」との共演はあったけど、今回は単独であるだけでなく、一条寺烈と共に新しいギャバンとなる十文字撃が登場。タイトルキャラクターを新しい俳優が引き継ぐ事での不安はつきものだけど、先に「ゴーバスターズ」に客演していたのを見ていた事で、その辺りの不安を持たずに観られたのは良かったと思う。
新たなスタートとして、撃がギャバンとなるいきさつを、幼馴染との友情や恋も絡めての物語を描いている。設定や展開は苦心して考えられたものとは思う…が、すり合わせが上手くないので所々のチグハグな感じが目立つ。更に、東映らしい過ぎる安易な演出がその雰囲気を壊しているというか。例えば、怪人とはいえ21世紀だというのにコンピュータからデータを盗むのにキーボードに手をかざすというのはどうだろう?まぁ、ドルギランのコクピットにあるコンピュータ操作が古いのは、古い作品のフォーマットに準じてるのだろうと考えられるのだが・・・。
諸々の不満はあったにしても、一条寺烈=大葉健二が登場するとそんな気分も吹っ飛ぶもの。「ゴーカイVSギャバン」でも年齢を感じさせないアクションを見せていたけど、今回はそれ以上な気がする。蹴りのカッコよさや、クルマを飛び越えるアクションは、期待していたもの以上であったではないかと。
そして、新旧2人揃っての蒸着シーンは素直にカッコいい。連携でのバトルが短いシーンであったのが実に残念なもので。
ドラマとしては惜しいものであったけど、アクションは期待値以上に楽しめた、東映らしいイベント映画に仕上がっていたものかと。<以下、核心メモ>
幼馴染の遠矢と共に火星近くの空間の歪みを調べに行った祭に、事故で宇宙を漂った撃が烈に救われて宇宙刑事に・・・という事なのだが、救出されたという事実以外に宇宙刑事に採用される要素が描かれていないのが、まずは唐突な点。少し考えれば、そのまま地球に戻すべきところだったのだが、宇宙の危機の話も含め半端なままで進んでいた様な。
一方の遠矢は、撃がわざと危険に陥った時に掴んだ手を離したと思い、ダークサイドに堕ちるというもの。この展開は、ドラマとしてまとめるのにもいいものであるとは思う。但し、ドン・ホラー復活の器として、撃と共通の幼馴染で好きであった衣月が選ばれた流れはあまりにも唐突。衣月に秘密があったとか、遠矢の心の闇を増大させる象徴として用いられたのなら判るが、何も無いままなんとなく進んだのは正直なところ興醒め。
烈は頼りない撃を、宇宙で助けた事もあって、ずっと陰から見守っていたのだろう、と思えば何度も助けたのも、撃が迷った時に道を示したのも納得。川辺での殴りあいはシンプルながらも、大葉健二のキャラクターとも相俟って、いい世代交代劇になっていたと思う。一方的に殴られていた撃が、烈にパンチを入れるあたりは好きだ。
今回の映画で、ギャバンだけでなく新世代のシャリバンシャイダーも登場したのだが、これが東映らしい"出てきただけ"でストーリーに絡まないのが残念というか愚かというか…。前半で不甲斐無い撃の対照となるものとしての役割はあったとしても、ラストバトルでもどこかからかなんとなくやって来て変身して戦うだけとは芸が無い。敵艦への突撃あたりで連携技とか見せてくれていれば印象も変わるのに…。まぁ、宇宙で出てきたのに変身前の姿だったのは、サービスとして好意的に捉えておくが。
ラストでは撃が、正体が遠矢であった敵を倒して終わるのだが、地球に残った衣月に撃が残した手紙で終わるというのは、優しいけど報われない感じがする様な。でも、衣月が座るベンチと木を遠方から見るカットは何度か使われるいい絵だったな。