人生の特等席

テアトル8、評価★★★☆
イーストウッド主演で、老スカウトマンとその娘を描いた物語。イーストウッドは出演のみで、監督は弟子となるロバート・ロレンツ。それでもメインスタッフはイーストウッド作品を支えてきた面々であるので、安心して観る事が出来る雰囲気が。"イーストウッド監督"でない故に独特の後味の悪さも無く、スッキリと気持ちよく観られるのが違いと言えば違いかw
イーストウッド演じるガスは、近年彼が演じる様な頑固な年寄りであるのだが、共にスカウトの旅に出る弁護士の娘となるミッキーがこれまた頑固者。そんな2人が過去のいきさつもあってうまくいかなかったのが、この旅の中でぶつかりながらも会話をする事で…という感じで進むもの。展開としては、至って普通という感じもするけど、それ故に2人の俳優が奏でるアンサンブルには惹きつけられる。そして、その間に入る新人スカウト…かつてガスによって見出されながら故障で投手を止め、そしてミッキーに接近するジョニーの存在が潤滑油であり展開の要素としてキレイにまとまっていたと思える。
派手なトリックも無いけど、その分人と人とが語る事の必要さや、仕事と人との繋がりのバランスなんかをふと考える映画だった様な。
しかし、イーストウッドは益々老いてる事を隠さない素敵な演技を見せるようになってきたなぁー。でも、ジーンズ姿はとてもカッコいい。<以下核心メモ>
娘は母が死んだ後6歳の時に親戚に預けられ、学生時代も殆ど父と離れて過ごしていたのだが、その間は連絡も無い状態であった為に、嫌われていた為と思いセラピーにも通う状態に。ただ、そうなった理由は、娘が6歳の折に馬小屋で見知らぬ男に触れられているのを見たガスが、逆上し痛めつけた過去があった事から離れる様になってしまった…という事で。そんなわけで、その話をお互いにするまでのギクシャクした感じがどうなるのか…というのが大筋。バーで男がミッキーに触れた際に殺そうという勢いで掴みかかったのも納得できるもの。
一方、視力が衰えて娘の視力を助けに、注目されている選手をドラフトで指名しないと決定するのだが、最後の決め手は"耳で聴いた音"。その、音で選手の良し悪しを判断するというくだりで、ガスのこれまでのスカウトとしての人生と、コンピューターでのデータのみで選手を選んだフィリップとの差が明確になるもので。
それでも、注目されていたボー・ジェントリーをチームはドラフト1位で指名するのだが、最後の展開で逆転の切り札となるのが、この新人選手に酷く扱われた青年。彼のピッチングの腕を発見したのはミッキーであるのだが、キャッチボールの音で発見し、その球を実際に受けて確かめるというが、いかにもガス仕込みという感じで、小気味いいものに。勿論、ここに至るまでに、その新人選手が鼻持ちならない奴で、その彼をデータのみで選び出したフィリップもいい奴では無い…という見せ方をしていたから、"してやったり"という感覚を観ている側も持ったのだけどね。
ラストで、ミッキーとジョニーが抱擁するのを、優しそうに見守るガスが、今回の旅を経て変わったんだという象徴の様で安心できた。それにしても、ミッキーとジョニーのベースボールカルトクイズ合戦は何が何やらww