ゼロ・グラビティ

テアトル7(3D)、評価★★★★
宇宙での人工衛星の補修作業中に起こるアクシデントから始まる物語。予告や煽り文句の印象だと、3Dでの効果を生かした、パニックアクション的なものだと思っていた。が、実際に観てみると、生きるという意志の下にあるサバイバルのドラマであったと感じられる。登場人物も少なく、それ故に会話は少ないのだけど、その中にドラマを組み立てる要素が丁寧に盛り込まれているというか。ラストシーンでの、じわじわくる喜びというのもまたいい。
予告でもその片鱗があったけど、ほぼ宇宙空間での無重力のドラマとなるのだけど、その臨場感と緊迫感は素晴らしい。かといって、映画的な見せ場としての演出も無いわけではないので、90分という短い尺ながらも緩急のテンポはあったと思える。テアトルの3Dだと効果が落ちる感じがしたのだけど、もっといい映画館で観たら、また印象は変わるかもしれない。
主演というか、ほぼ一人でドラマを引っ張っていくライアン・ストーンを演じたのがサンドラ・ブロック。「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」で久しぶりに見た際に、その表現力に感心したのだけど、今作も素晴らしかった。彼女が持っているキュートさという部分を封印し、強さという面をしっかり見せていたと言っていいのか。
結末を知ったと所で、劇場での3D上映があるうちに改めて観たい…そう感じる映画だった。<以下核心メモ>
結末は地に足のついた展開で、地球への帰還で終わるという。ライアンが落下した湖か沼から這い上がり、地球の土を掴んで感謝をし、そしてなんとか立ち上がる…というところで原題の"GRAVITY"というタイトルが表示され、そのタイトルの妙になるほどと思わされるわけで。
地球へ戻るのに、乗っていたシャトルは破損、逃げ込んだISSソユーズも再突入はできず…という事で、中国のステーションにある宇宙船、神舟で戻るというもの。その過程で、当初は一緒に生き残りながら、ライアンを助ける為に自ら犠牲となったマットの、去り際の通信が大きな力になるという。そんな展開もあったし、マットを演じるのがジョージ・クルーニーという事で、諦めかけたライアンの元に突如現れたのは本人かと思ったら、低酸素症で見た幻だったのね。ただし、そのシーンによって後半からラストまでの、物語のベクトルが一気に増した気がする。勿論、展開上ではソユーズを操縦した後だからこそ、それに近い神舟を操縦するという流れも自然になっていたりするのだが。
この映画、宇宙服の外から捉えたと思ったら、宇宙服内側からの視点になったりとカメラ位置が変化するのだけど、地上に降りたライアンが立って歩き出した時に跳ねた泥水が、完全に画面から飛び出てくるのかと思ったら、カメラのレンズに付いた状態のままエンドとなったのが気になった。思った以上に、孤独に生き抜く女性の姿を描きながらも、誰かが見ている視点…というポジションで作られた映画だったのだろうか、と。