永遠の0

テアトル6、評価★★★★
同名小説の映画化。原作は未読。
予告や宣伝の煽りから、現代も絡めながら宮部久蔵という零戦パイロットを描く戦記の様なものかと思ったのだが、現代をベースに想い出語りの再現として戦時や戦闘の様子を描いたという構成。それで不満があるのかと、というわけでなく"戦争を語り継ぐ"というテーマからすれば当然の内容であり、一連の流れとして見せた映画として素直に楽しめるもの。
監督は「ALWAYS」の山崎貴。なんか、「ALWAYS」で見せた"失われた景色をVFXで見せて伝えよう"という想いが、この映画では更にテーマにも広がったかなぁ、と観終わってみれば、この監督が撮ったのも必然という気がしてきた。
山崎監督という事で、VFXは安定の白組。それぞれの戦闘シーンは長くはないけど、更に史実を突き詰めた映像は素晴らしい。零戦は勿論だけど、VFXが主流になってから日本の空母があれだけ描かれたのは初めてじゃないのかな?ただ、時折飛行機のシーンで"映像からの浮き"があって気になったけど、あれは映画館のせいなのか…ちょっとソフト化でどうなるか心配するところ。
単に戦争の悲しさを描いてるから泣けるとかいうのではなく、人の想いがしっかり描かれている映画だったので満足。<以下核心メモ>
映画の展開は、現代パートの主人公である健太郎が姉に付き合わされる形で、祖母の死をきっかけに知った実の祖父の事を調べる…というものだけど、現代パートの語り手がそれぞれ個性的な俳優を揃えていて、それだけでも十分に見応えがある。その中で、宮部が特攻する直前に機体を交換した事で生き残ったのが、実は健太郎たちの祖父という展開は物語的ではあるけど、戦後のエピソードを丁寧に描いているので、戦争を生き残ったもの達のドラマという側面としていい流れだと言える。その中の祖父の葛藤があったからこそ、最後の語り手として相応しく、生きているうちに戦争の事を伝える必要というものを話すのが自然に思えるもので。
極道となった景浦が初めは"臆病者"と宮部を言った健太郎を追い返したのが、調べていくうちに姿勢が変わった事で、真実を話すのだが、自分としてはその後に景浦がしっかりと健太郎を抱きしめるシーンに思わず落涙。特攻の随伴で守ると誓った宮部を見失った後悔等も含めての行為なのだろう。
物語のラストは、健太郎が実の祖父らが戦い望んだ未来の姿としてか、目に入った何気ない家族や恋人の光景で泣き叫ぶ姿で終るのだけど、その想いこそがメッセージなのだろうな。だからこそ、そのシーンで宮部の乗る零戦が登場して、健太郎と視線を交わすというものが入るのも、あざというと思いながらも必然であったと。
しかし、合コンのシーンは、健太郎が祖父を調べる事で考えが変わる事を示すいいシーンなのだけど、女子の台詞の軽さというか"こんなものでしょう"という感じはもう少しならなかったのか…とは思う。