トリック劇場版 ラストステージ

テアトル7、評価★★★
「トリック」の完結編としての映画。今までに無い海外を舞台にした物語で、トリックらしさというものは大丈夫なのだろうかと思ってはいたけど、期待以上にトリックであった。むしろ、トリック的な意味での呪術師との戦いよりも、奈緒子と上田の関わりがラストらしく綺麗にまとめられたというところ。もっとも、直前のドラマスペシャルで直球のネタをやっていたので、ここでは変化球で攻めても観ていて不満は感じなかった、という事もあるだろうが。
予告で言っていた奈緒子の出生の秘密とかいう事は無かったけど、霊能力者の血を受け継ぐものの悩みなんかが描かれて、また違ったドラマが展開されていた。同類だからこそ気付くものというか。
最後は奈緒子と上田に焦点が当てられるという事で、大物が演じる脇役は無かったけど、確実な俳優が脇を固めていたというのは見ていて安心できた。中でも、北村一輝の怪演は変だけども実にハマっていた。
ドラマシリーズとしての総括として、しんみりする終わりだったけど、そこはトリックという事で細かいネタも含めて楽しめたな。<以下核心メモ>
交渉に行った村上商事に関わる一行の川島と谷岡を死に至らせたのは、村上商事の社員であり上田を呼んだ加賀美。意外と判りやすい展開ではあったのだけど、その裏にある呪術師に大きな薬の知識で娘の病気を救ってもらったこと、それから感じた自然への敬意というものの感覚は、トリックの以前の作品であったような過去のものと向き合うという流れに共通している気がするもので。
古くからムッシュム・ラー村に伝わっていた上空での火の玉の爆発は、地中から噴出したガスが空中で爆発したものだという。それを防ぐために地中に溜まっている段階で奈緒子が、自分が犠牲となって地中にあるうちに爆発させるのだが、その答えに至るまでに描かれた呪術師との会話が重要になっており、呪術師が谷岡の銃に撃たれていなかったらその役目は彼女が行う…すなわち奈緒子達の来訪が全てを狂わせてしまった…という想いが実に悲しい。そこに集約されるまでに、散歩しながら現地の人と会話したりマジックを見せたりという楽しそうなシーンも続いた事で、落差が強調されているもの。
ラストでは時間が一気に1年後に。矢部達のサボりを描きつつ"記憶喪失の女性が"と示し、上田が冒頭の解説にあったフィーディーニの如く言った奈緒子の言葉に従うように、霊能力者を集めるというところでエンドロール。曲が終ったところで、約束の日の時間が切れるというところで今までと印象の違う服を着た奈緒子が訪れ、上田と最初に会った時に見せたのであろうマジックを、過去の映像と重ねる様に流れるのだが、それを見る上田の嬉しさの滲み出る表情が締めくくりとして、実に相応しいものなのであろうね。奈緒子は記憶を失っても生きており、そしてまた現れた縁というものも含めて。