ホビット 竜に奪われた王国

フォーラム3(3D)、評価★★★☆
ホビット」の2作目。3部作の2本目という事であるが、途中から始まり途中で終るという感覚が思った以上に大きい。その分、導入からのテンポはいいのであるけども。
物語の流れは原作通りで、ビヨルンの館も湖の町も出てくるけども、扱いがだいぶ変わっている。エルフの森の登場や、そこにLOTRレゴラスが登場する事で、"PJ版の中つ国の物語"という印象が強くなった感が。それが悪いというのではなく、映画としての作りとしては正解なのであろうと。それでも、原作で印象的な樽乗りなんかが明確に映像化されると嬉しくもあり、そこに含まれるコミカルさが、イメージしている「ホビット」らしさに繋がっているのだろう、と思わせる。
2本目はビルボの物語というよりは、邦題のサブタイトルにある通りにトーリンの想いや戦いを描いた物語であった。危険なはなれ山に向かう旅を、LOTRに引き寄せて描くと、そうなるのであろうという感じで。そんなわけで、トーリンの強さと弱さがドラマの軸なのだろうと、自分は感じた。勿論、はなれ山でのビルボの活躍は期待通り。ビルボとスマウグの駆引きは原作を読んで想像していた通りの再現であり、その舞台となるスマウグの溜め込んだ財宝の山もまた素晴らしかった。
半端で終る故に次への期待が高まるもの。今回も長い上映時間があまり気にならなかったな。
ただ、今回は3Dで観たけれども、このシリーズは純粋な映像の美しさや物語の面白さを楽しむ為にも、3Dはむしろ邪魔なのではないかと思う。<以下核心メモ>
レゴラスの父であるスランドゥイルの登場で、トーリンとの会話でドワーフとエルフの諍いが描かれるのだが、後にLOTRでのレゴラスを考えると感慨深いものが。その一方でオリジナルキャラクターのタウリエルが、ドワーフのキーリと惹かれあう様な描かれ方をしているのが面白い。これが結ばれる事は無いであろうが、3作目でどう繋がるのか、興味は尽きない。
物語は、ドワーフ達の侵入に怒ったスマウグが湖の街を破壊すべく飛び立ち、ビルボが大変な事になってしまったと、それを見送るところで終了。そこまでに、ドワーフ達とスマウグの戦いが描かれるのだが、トーリの策で復活させた溶鉱炉から流れた金属を浴びたスマウグが飛び立つシーンの美しさは見事。その戦いでは、そこまでに意地を張り自分勝手な思いも出てきたトーリンが、王らしい勇敢さと知恵で立ち向かうのが、この映画のクライマックスであろう。
湖の町ではバードに相当するキャラクターとして、バルドが登場。スマウグを仕留める黒い矢の持ち主であるのだが、その先祖がスマウグに黒い矢を放ちつつも倒せなかったという話で、キャラクターが広がっている。その時にできたスマウグの鱗の綻びも描かれ、最終的にどう打ち倒すのか…となるのだが、それは3本目へ繋がる事に。
ガンダルフの活躍は今回もどちらかといえば単独で、世界の危機を探る旅に。死人遣いを追っての旅の果てに、黒い力として遂にサウロンが描かれ、一気にLOTRと繋がる。このあたりは、「ホビット」が原作の映画化だけではなく、PJ版としての再構築した流れとしては当然の事として嬉しい。