フューリー

フォーラム3、評価★★★★
ブラッド・ピット主演のWWII時の戦車を中心に描いた戦争映画。
ピットが制作もしており、欠員補充として新兵が入ってくるという展開から、ピットが"父親役"としての成長ものであるのは確かな事。だだ、この新兵の成長が人間的なタフさというよりも狂気に近いものもあるのだけど。
話には聞いていたけど、その狂気を見せるための壮絶な演出が何度も。間に挟まれるホッとする優しいシーンも粗暴さに荒らされ…と思ったら、そこから更に気分的に落としていくのだから。感覚的には「地獄の黙示録」のDC版と同等かそれ以上というか。
そういう異常事態を前半からガンガン描く事で、逆にフューリーに乗り込むドン以下の5人の繋がりが強く描かれるのが面白い。そういう事を経て、新兵であるノーマンの成長がしっかり見えるのだから。
戦車に焦点を当てたという事で、その描き方は細かく密接したもの。やはり、本物の戦車が動いている存在感というものは素晴らしい。戦車と連携して動く歩兵の様子も興味深く見る事ができた。歩兵の機銃相手には戦車は強いなぁ、という感じで。そして、そんなシャーマンの砲弾をはじき返すタイガーの恐怖感。
ピットの古参兵というか父親的な雰囲気の安定感は想像通りであったけど、共演のシャイア・ラブーフがかなり年を食った感じになっていたのには驚いたな。<以下核心メモ>
ポスター等のアオリで5人の戦車兵が300人のドイツ兵と戦うという内容があったけど、タイガーの登場はその状況を作り出す為の経過という事で。3台のシャーマンでタイガーに与するものの、次々と餌食になる恐怖感はなかなかのもの。そして、1対1の勝負でタイガーを倒すには後に回り込んでの砲撃になるのね。まぁ、あれだけ前面装甲の厚さを見せ付けられればね。
クライッマクスはアオリ文句の通りに300人のドイツ兵との戦いになるのだが、その前に地雷で十字路の真ん中で走行不能になり、そこでの篭城戦の様相を見せるものに。走らなくてどうなるのかと思ったが、むしろ砲塔や機銃等で戦車の力を存分に引き出しての総力戦はある意味新しく展開が読めない面白さがあった。もちろん、そんな状況で長く戦えるはずも無く次々と命を落としていくクルー。最後にはドンの命令でノーマンが下部ハッチから脱出して生き残るのだが、夜が明けて駆けつけた友軍に助けられ、乗せられた輸送車から見送るフューリーに何を思うのか考えさせられる表情が印象的であった。
物語の中盤、制圧した街で出会った未亡人とその従妹がドンとノーマンと触れ合う様子が描かれ、従妹とノーマンの惹かれ合う展開になるのだが、そこに別の女と戦車で楽しんだ他のクルーが来て無礼を…というところで戦争に浸かった者たちの無礼さからくる嫌悪感を醸し出している…と思ったら、その直後の爆撃で従妹達が住んでいたアパートメントが破壊されて彼女らの死が描かれるという救いの無さ。ただ、それがあるからこそノーマンはドイツ兵を憎み殺すという成長というか狂気に堕ちるのだろうと。その前に描かれた、自分の臆病さ故に友軍に死人が出たというショックも踏まえたうえで。