アメリカン・スナイパー

テアトル1、評価★★★★☆
アメリカで実在したシールズの狙撃兵クリス・カイルを描いた映画。
冒頭からギリギリした緊張感で入ったと思いきや、クリスの幼い時期のシーンに飛び、その人を描きながら戦場の狂気に晒される様を描くというもの。狙撃兵という立場で、敵としても狙撃兵が登場しその競い合いという要素もあって緊迫感溢れる展開ではあるのだけど、そこはイーストウッド監督らしくどこか突き放した様な視点で描いていると感じられる。
かと言って、人から離れているわけではなくて、クリスという人物だけでなく、妻と子供達、そして仲間の米軍兵士も丁寧に描かれていると思えるもので。その一方で、対する敵の狂気も際立つもので。
現代の戦闘を描いた映画としての兵器の魅力もまた十分。アサルトライフルにスナイパーライフルも多数出てくるけど、ハンビーの活躍が多かった気も。
面白いだけではないし、クリスという人間に対しての評価も色々あるだけど、イーストウッド節での人間ドラマが堪能できる映画なのは間違いないと思う。<以下核心メモ>
映画の最後はクリスが、PTSDの元海兵隊員に殺される直前の家族との一時が描かれるわけだが、この映画の制作が始まってからその事件があったとパンフレットにあって驚く。エンディングの前半は、実際のクリスの追悼イベントでの映像であった様だし。そして、エンドロールが無音であるのは監督からの問いかけの時間なのだろうかと思ってしまうもので。
やはり、終盤の敵のスナイパーとの戦いは戦闘シーンでの緊張感が高まるところ。銃撃自体は短いシーンであるのだけど、1900メートルという超ロングレンジで味方の命を守るための一瞬の判断という緊張感というか。そして、その直後の銃弾が飛び交う中で妻に衛星電話をかけて、軍人を辞めると話すあたりの気持ちの動きはなんとも言えない。シーンとしては最も危険な状態で緊迫感が高まってるのに。
それにしても、夫婦を繋ぐ要素として戦場と本国間の電話での会話が多く描かれていたのは面白かった。道具的な要素も面白かったけど、実際に帰国してからの夫婦のすれ違いというか気持ちだけは戦場にある様な夫を心配する妻との距離感の面白さというか。
軍隊を辞めて、自分のPTSDもあって傷病軍人と関わる様になったクリスが、その活動の中で手を差し伸べた相手に殺されるというのは、残酷な展開ではあるのだけど、殺されるシーンを描かない事も含めイーストウッド監督らしいものではあるなと。
この映画では撃たれて血が吹き出たり倒れたりするシーンが当たり前の様に出てくるけど、中盤の倒れた男からロケットランチャーを拾って抱えるけどすぐに手放し、カイルが撃たなくて済んだとホッとするシーンのドキドキ感も良かった。その対比として、序盤で最初の狙撃として対戦車手榴弾を手にした子供を撃つシーンが効果的であったりしたわけで。