ミケランジェロ・プロジェクト

フォーラム1、評価★★★☆
第二次大戦時に、ナチスに奪われた美術品等を救出した部隊の物語。史実ではあるけれど、脚色でその事実を描いたというところか。原題は"THE MONUMENTS MEN"であり、部隊の通称なのだとか。
美術の専門家達が集まった部隊であり、戦闘任務では無いという事で、戦争映画でありながらもかなり異質な雰囲気を持つもので。「プライベート・ライアン」等で壮絶に描かれたノルマンディも、上陸艇を使う事は同じでありながらも、その扉が開いた後に広がるのは静かなノルマンディの海岸。バルジも戦闘状態でない描き方であったし。
勿論、それはモニュメンツメンのミッションが美術品の救出だからではあるのだけど。とは言っても、戦闘地域に向かう事での危険はある。だからこそ、人の命を懸けてまで美術品を救い出す必要があるのか、という問い掛けやドラマが盛り上がるというもので。そのドラマを作るのが、メンバーそれぞれの個性なのだろうと。
変化球な戦争映画でありながらも、往年の娯楽要素の強い作品の雰囲気も強く、ハラハラしながらも楽しく観られる事ができた。そのハラハラには、命のやりとりだけでなく基本的な宝探しという要素があったからだと思うもので。
そういえば、メインの移動に使う鹵獲したキューベルワーゲンを初めとして、戦時の車両という見所も多かったかな。<以下核心メモ>
追跡の軸となる美術品は聖母子像と祭壇画。祭壇画は最後の1枚が見つからない・・・と騒いでいた時に、ふとした拍子で捜索の情況を確認する為にテーブル代わりにしていた板がそれであったとか、聖母子像は占領するソ連が迫る中でフランクが発見し、彼を探しにきたメンバー達が同じ驚き方をしたりとか、意外にユニークな演出が。ただ、それはそれまでの緊張感をふまえて、作戦が終結に到るという雰囲気も含めたものであったのだろうかと。
聖母子像を守ろうとしてナチスに撃たれたドナルド、戦闘区域と気付かずに入った地で銃撃戦の中で撃たれたジャンという2人の犠牲者が出たミッション。そんな中で、フランクの語りとして命を懸けても守るべきものという事があったけど、それがこの映画の中での答えなのだろうと。人間の作ってきた歴史や文化は失われたら終わってしまうというか。
ポスターで見て立ち位置が気になっていたケイト・ブランシェット演じるキャラクターのクレールは、パリにてナチスの下で美術品の管理をしていた女性。マット・デイモンが演じるジェームズが接触し、美術品の行き先を聞き出す相手になるのだが、男だらけの作品の中で、圧倒的な存在と美しさを見せてくれたと思う。彼女の存在で、奪われた美術品が持ち主に返される必要というものが強調され、クライマックスでの鉱山やノイシュヴァンシュタイン城での探索に理由もしっかり見えてくるもので。クレールについても、モデルとなるキャラクターがしっかりいるものなのね。