ガールズ&パンツァー 劇場版

MOVIX仙台8、評価★★★★☆
TVアニメ「ガールズ&パンツァー」の劇場版。
正直なところ"戦車道"という飛び道具的な設定で始まった作品だけに、続編として何をやるのかと思ってはいたのだが、その戦車道という設定があるからこその物語となっており納得。TVの後にOVAがあったのだけど、そこをステップとして盛り上げた内容でもあるか。
基本的には映画という環境を生かして戦車の戦いを音響も含めてスケールアップして存分に描き、その戦いを成り立たせる為にドラマを挿入したという構成といった感じでもある。
とにかく戦車の動きや音は今まで以上に素晴らしく、車体や周辺へのダメージ表現もしっかり描かれ、戦車道とはいえ戦いの激しさをしっかり見せてくれた。勿論、そういうリアルさだけではなくアニメーションらしい動きも盛りだくさんになっており、搭乗者を含めての戦車のキャラクターというものも存分に際立つ描き方がされているのは、ガルパンらしいと言っていいのでは。戦車の表現については今までアニメで不可能と思われていた様なものが、この劇場版にてここまで昇華できたものかと感心できるものだと思う。
そんな戦車ばかりではなく、キャラクター描写もTVからのメンバーに加え、新たにたくさん加わったキャラまで、長くはない尺の中でそれぞれ見せ場を作って描いていたのは驚くしかな。特に大洗のメンバーの成長具合は、TVの途中でのエピソードとなるOVAが成長途中であった事を踏まえると、全国大会後の成長っぷりをよく描ききったものと思う。間抜けなところもあり、期待からはやや拍子抜けした感じであった知波単学園は、大洗の成長を際立たせる役割だったのかもしれない。
本編の前に簡単な説明の映像があったとしても、これは完全にファン向けの映画なのは間違いない。ただ、そのファンに対しては期待以上のものを見せてくれたものとして、大成功となるものと言える一本に仕上がっていた。<以下核心メモ>
TV版にて解決されたと思ってた廃校の問題が残っていて、それが物語の展開になるとは思っていなかった。その廃校を撤回する為の試合がクライマックスになるのだけど、CMにあった「取り戻す」の意味がそこにあったとは。
その取り戻すための試合をする為に動くのが会長であるのだけど、流れで西住流の家元まで出てくるのはいい展開。
その試合は8両対30両の殲滅戦ルールで相手は大学の選抜チーム、どう考えても勝ち目の無い戦いに駆けつけるのが、全国大会等で戦ったライバル達という展開は熱い。競い合ったもの達が窮地で手を組むという流れは、実に戦車道らしいものだと思ってしまうもので。それでも、作戦名を付けるくだりなんかでは個性の強烈な各校の隊長達の妙な競い合いもあったりで楽しい。
相手は戦略に長けているだけでなく、カール臼砲なんかも持ち出して強さを見せ付けるのだけど、個性的な作戦で立ち向かう様は面白い。特に、継続高校のBT-42は履帯が外れても走行できるという特性を描いているのだが、最初は何があったかよくわからなかった。
大洗側で最後に残るのは西住姉妹の2両で、ティーガーIの空砲を後部に撃って押し出したIV号の突撃でセンチュリオンを撃破するのだが、TV版の最後で戦った姉妹が今回は共に戦うという構図が面白いもので。廃校が決まって転校の書類を準備するために帰省したみほと、それをやさしく迎えるまほのやりとりが、今までは描けなかったところであったのだろうと。この姉妹の繋がりを描くのも、映画のテーマであったのだろう。