オデッセイ

テアトル3、評価★★★★★
原作小説があるらしいが未読での鑑賞。火星で一人ぼっちになった男のサバイバル劇という内容は聞いていたけど、一人になった理由が災害で脱出しようとしたチームの中で事故で一人だけ残ってしまった男という情況であり、想像とはだいぶ違う物語であった。
原作者の考えもあるみたいだけど、主人公のマーク・ワトニーがとにかく生き残る為に何をすべきかを考えて一つ一つ問題をクリアしていく展開が実に面白い。予告では芋の栽培が取り上げられていたけど、その前に保管している食料のリストアップをしたりとか描写が細かい。そして、その細かい描写が冗長的でなく必然的に繋がれているというか。
すごく論理的に描かれている様だけど、印象的に流れる船長の趣味であるディスコミュージックの数々や、聞きながらもそれに悪態をつくワトニーという感じで、随所に感情を見せる様なユーモアが含まれているので、単にハラハラするだけでなく観ている側もスムーズに感情を移入できる様な流れになっている気はした。
想像と違っていた点が、地球のNASAからのバックアップ。帰還する為の地球からの救援はあるだろうと思ったけど、通信を成立させる為の工夫や生き延びるためのアイデアを提案したりと。火星にあるもので目的を達する為に、地球側でレプリカや同型機を用いての検討内容を通信でやりとりする様は、まるで「アポロ13」を彷彿させる様でありワクワクする。だた、「アポロ13」と異なるのはSFらしくNASAの中も思惑が渦巻いていて、救うかどうかの駆け引きがあったりするのだが。
監督はリドリー・スコットなのだけど、宇宙船内の雰囲気やメカニカルの意匠、特に車両のライトまわりにはそれらしい雰囲気があった様な。
サバイバル的なサスペンスよりも、孤独やチームワークといった人間の事をSFという舞台で描いた作品だったと思える。<以下核心メモ>
ワトニーが地球と通信をする為に思いついて用いたのが、火星表面に着地していたマーズパスファインダー。それを再び起動し、通信を出来る様になってNASAが動き始めた時から物語が動き始めた気がする。
NASAが救出の為に運搬船を急いで作り、点検や検討をそれなりにして送り出すのだが、これは打ち上げ後に貨物内の物体のせいで姿勢を乱し爆発。その代わりの手として出てくるのが、中国の持っているロケットの提供という流れ。これは展開として意外でありつつも、現実を見ると納得できるものではあるのだけど、やはりここでは中国の出番なのかと思わずにはいられなかった。
その中国のロケットで打ち上げた物資を受け取り火星に救出に行く事になるのが、4ヵ月後に生存を知りワトニーを置いてきてしまったという思いのあったチームメンバーの乗るヘルメス号。彼らが地球の重力ターンで火星に向かうところから、チームものとしての様相が見えてくるのも面白く好きなポイント。その火星までの道程はあまり描かれないけど、救出ミッションの緊張感は素晴らしい。メンバーそれぞれが得意分野を駆使していく描写はとても楽しい。火星接近時に速すぎる船体を、先端部を爆破して減速するくだりは誰かが犠牲になるんじゃないかとハラハラしていた。そして、いざ火星から後続チームの帰還用に準備されていた宇宙船を軽量化して使用し、高高度まで打ち上げられたワトニーをキャッチアップするところで船外活動のロボットにくくりつけた命綱が短く距離が足りないというところで、ワトニーが宇宙服の手袋に穴を空けて漏れて噴出する酸素を推進剤にしてたどり着くというのは、最高に緊張感があるクライマックスであったと思う。