かぐや姫の物語

テアトル7、評価★★★★☆
竹取物語」を元に高畑勲監督が作った映画。想像以上に原作に順ずるもので、物語の流れは誰もが知っているもの。でも、かぐや姫の感じる喜怒哀楽、翁や媼や山の自然等々との関わりなんかが優しい感じで描かれていた。勿論、優しいだけでなく激しさを持つシーンがあったわけで。
この映画、予告からいわゆる"セルアニメ"とは異なる質感を持った線で描かれるのだけど、その動きは実に素晴らしい。というか、よくこの線で140分近く動かしたものだと感心する。勿論、その線の独特さの違和感を持つのは冒頭くらいで、すぐにその雰囲気を持つ世界に存分に浸ったというか。そして、その描線にマッチした背景画の素晴らしいこと。これだけの質感を持たせた仕事となれば、時間がかかるのも納得というもの。
語り口の素晴らしさもあるけど、やはりその映像の力に圧倒されるという映画だった。<以下核心メモ>
"姫の犯した罪と罰"というキャッチコピーであったのだが、かぐや姫自体は月から地球に憧れた事に端を発する事の罪で地球に下ろされた…という話の様で。そのあたりの件は終盤で少しだけ一気に語られるので、少し判りにくいというか。まぁ、そもそも姫が月から来た事を気付くという流れからなのだから、終盤で一気の流れになるのは仕方がない。
最後は月からの使者が迎えに来るのだが、SF的になりそうなものを、昔の絵本か何かで読んだ様な仏教的な雲に乗った人達という表現に逆に驚く。そんな古典的な表現だったからこそ、ラストで姫が振り向いた時に見える地球の姿のインパクトが大きく感じられた。