沈まぬ太陽

テアトル7、評価★★★★☆
山崎豊子原作の同名小説の映画化。原作は未読。
そんなわけで、冒頭からの航空機事故が、御巣鷹山への123便の墜落という事で驚く。航空会社をネタに取扱っているから、日航機の墜落事故はモチーフになっているとは思ったけど、その事故そのものを描いているとは。どうりで、パンフや映画内で「フィクションです」と強調したり、日航社内での意見もあったりしたわけだ。原作にもあるのだろうけど、事故後の検視所の描写は緊迫感と悲壮感も伴うもので見事。
そんな話しだけど、物語としての面白さは十分。予告の内容から、海外への赴任のくだりから進んで、クライマックスで事故のエピソードかと思ったけど、冒頭から事故を描き、過去のいきさつを踏まえ、その後に展開する物語の構成であった為、長丁場を感じさせない内容だった。
何より、主演の渡辺謙や、予告でも見知った脇を固める三浦友和石坂浩二の他にも、「これでもか」というくらいの国内有数の役者陣を見ているだけでも楽しすぎるのだが。中でも、香川照之がまたまた印象的なキャラクターを見せてくれたなぁ、と。
でも、飛行機のCG処理はちょっと唐突で違和感があったのは否めない。
尺は長いけど、事実を取り入れたうえでの良質なドラマとして十分に観応えがあったので良かった。


<以下核心メモ>
事故のくだりと、恩地の海外赴任のくだりは、後半に控える会長人事とその改革への長いプロローグだったわけで。さらに冒頭で描かれる首相フライト阻止という脅しも含んでの労働組合のやりとりが、後々まで大きなファクターとして効いてくるのが面白い。その労組の動きがあったからこそ、恩地の海外赴任があった訳だし、会長室への抜擢もあったのだから。更に行天が、その思いや、やり口故に復讐の様な形で、逮捕という結末を迎える、という展開も含んでいるもので。
石坂浩二演じる会長が退任に追い込まれた際に、語っていたのは国際航空社員への問いかけであったというのは面白い。
大きな流れは中途で終わる感じだが、恩地にナイロビへの再赴任で終わる物語。その自然の光景で締めくくられるだけに、会社や家族や人というものを考えさせる余韻を持った映画だなぁ、と。