コンテイジョン

フォーラム3、評価★★★★★
ウィルスの全世界への蔓延を描く物語。
マット・デイモンローレンス・フィッシュバーンといった名のある俳優を揃えながら、アンサンブルではなく細かな事象を見せていく様は正に監督のスティーブン・ソダーバーグの真骨頂といったところか。
冒頭で事象の初期段階で感染者の死に様を見せるだけでなく、美しいグウィネス・パルトロウのショッキングな解剖シーンがあって「後半はどんな凄惨なシーンが待っているんだ?」と思っていたけど、そこからはドライな視点でありながらも濃い人間ドラマが展開されるもの。モンタージュで進む時間も多いのだが、それは重くなりがちなドラマにテンポを与えていたと思える。
また、一方では感染源はどこだったのか?この蔓延に終わりはあるのか?情報で不安にかられた人々は抑えられるのか?というサスペンス的な要素も適度に盛り込まれたもので。その中で不安を煽るフリージャーナリストを演じたジュード・ロウの胡散臭さはあるけどカリスマもある存在はハマリすぎ。
最終的に、ワクチンでウィルスを抑える事はできるのだけど、単にそれだけで終わらせないハッピーなんだけどドライにラストも描いているわけで。
上映時間は106分と長くは無く複雑な構成ではないけど、実に密度が濃くて満足な一本。<以下核心メモ>
この物語、思えば事象の2日目から始まってるな・・・とは思ったけど、それはラストシーンが蝙蝠→蝙蝠の落としたバナナ→バナナを食べた豚→豚を調理しようとした人→最初の感染者となるベス・・・という流れで1日目の事実を明かすという納得の種明かし。
途中までもWHOの調査でカジノでの人の動きは追っているけど、最後までモヤモヤとしていた感覚を吹き飛ばす見事なラスト。
その直前には、ミッチが始まったワクチン接種が終わったボーイフレンドと娘の為にドレスを用意し、今ままで頑なに接触させなかったのがダンスを許すという事で、失われていない人の繋がりを見せている。
また、CDCで人々の事を心配しながらも、得た情報で恋人を救おうとしたチーヴァー博士がワクチンを2つ手に入れ恋人と共に打つのか・・・と思ったら、自分の分は待つのが長くなっていたCDC職員の息子に与えた事で締め、やはり博士は一つの人間的な過ちがあったとしても、人類の為に戦っていた人なんだなぁ、と落ち着くわけで。
他にも、取引で偽モノのワクチンを渡した事に怒るレオノーラなど、高潔な人々の働きで世界は救われたんだよな、と思える。それを効果的に見せるためにも、恐怖でパニックを起こし略奪を起こす人たちを描いていたけど、これもまた人間の姿なんだろう、と。