許されざる者

テアトル1、評価★★★
クリント・イーストウッドの"UNFORGIVEN"の日本版リメイク。
舞台を明治初頭の北海道とし、開拓民が入植しそれによってアイヌの土地が侵されるという不安定な時期の物語に。キャラクターの配置や重みの変更はあるけれども、概ねオリジナルと同等に進む物語。元が西部劇という一定のフォーマットの上に成り立っていたものを、時代故にいわゆる侍の出る時代劇というフォーマットを持っていないので、逆に人間ドラマという事も踏まえての丁寧な作品になっていた。
ただ、そういう内容の変更の中で、主人公である十兵衛の妻も含めてアイヌとの関わりを大きくした事で、変な力が加わった感覚が。勿論、そこにドラマの厚みがという事もあるのだろうけど、自分にとっては残念な方向に進んだ要素となったというわけで。
しかし、役者をここまで揃えたものだと感心。オリジナルのジーン・ハックマンと比しても独特の存在感を見せ付けた佐藤浩市は勿論のこと、イングリッシュ・ボブに相当する北大路正春を演じた國村隼は面白かった。あと、女郎のリーダーを演じた小池栄子の強さは素敵。
そして、明治とはいえ日本を舞台にした事で、銃だけでなく刀の重みを交えての戦いが描かれたのは印象深い。まぁ、馬の下敷きで折れた骨が飛び出てるとか、諸々と悪趣味なところが無いわけではなかったが…。
厳しい北海道の風景とかを踏まえ、日本映画らしい作品にはなっていたのだけど、結末に納得がいかないところもあって、大好きなオリジナル版には及ばないものになっていたな、と思ってしまうのは仕方が無い。<以下核心メモ>
十兵衛の妻は、彼がアイヌの村から連れ去ったものだという。元々、幕府の下で戦っていた彼が、何故そんな事に及んだのかは不明だけど、更に妻が彼をどう立ち直らせたのかが感覚として伝わらなかった様な。オリジナルでもそんなに丁寧には描かれなかったけど、その感覚は十分伝わっていたハズだから…。
スコフィール・キッドの代わりとなるのは、アイヌと和人の間に生まれたという五郎。そんな生い立ち故に、十兵衛達の話に乗り、十兵衛の妻との事も含めてアイヌとの関わりや、和人の無情な所業を描き出すのだが、やはり展開が寄り道をしている感が強かったのは確か。しかし、五郎を見ていると、柳楽優弥の印象が変わるくらいの素晴らしさはあった。まぁ、「七人の侍」での菊千代を彷彿とするものではあったがw
冒頭から妻の形見として首飾りが出てきた時には悪い予感はしたけど、その予感は的中。最後の戦いに出る前に、五郎と顔を切られたなつめに、子供達に賞金を届けるのを頼むと共に、その形見を預けるとは。そして、その2人が子供達のところに行き、十兵衛は行方知れずというラスト。旧知の友を殺された事に対しての報復として、一蔵に向かったのはいいのだけど、そもそもの行動原理は子供達に冬をちゃんと越させてやりたい、という事ではなかったのか。それも、金を届けるだけで良かったのか…と。その辺りを変更する要素が見えなかっただけに、見終わった後のモヤモヤ感があった為に、なんかやりきれない感じが。それとも、何か見落としていたのか?