清須会議

テアトル1、評価★★★★
三谷幸喜監督が、織田信長が本能寺で倒れた後に織田家の相続を描いたもの。三谷映画らしい、オールスターキャストで華やかな映画。それでも、時代劇という事で少し泥臭い感じはあるかな?
上映時間が2時間18分と、少し長いかと思ったけども、冒頭で本能寺の変から明智光秀が殺されるまで、本題に入るまでの経緯を簡単にでもまとめていた事から、その時間も納得というところか。
物語は、その会議を巡って大泉洋演じる羽柴秀吉と、役所広司演じる柴田勝家の静かな戦いが軸になるもの。そこに、アンサンブルキャストが絡む感じで。そんな中で、丹羽長秀を演じる小日向文世の存在感が素晴らしい。元から静かな役を演じる俳優ではあるけれど、今回の肝となるシーンでの表情を変えない沈黙は実に緊張感があり素晴らしい。後は最後にカッコよさを見せる浅野忠信前田利家も印象深い。
原作となる三谷監督の小説は口語体で繰り広げられるらしいが、映画は秀吉の名古屋弁らしきものも含めて多様な感じ。その多用さが時代劇という雰囲気で邪魔になるという感じはなかった。むしろ、心地よいリズムを作っているというか。どちらかというと、劇中の踊りや所作の一部に現代的すぎる動きがあったほうが気になったというか…。気になったといえば、遠景での清須城の存在感がありすぎて違和感のある気もしたカットがあったのだが。
多分、"清須会議"を知る為の歴史ものとして観ると弱いものだと思う。でも、時代劇として見れば主要人物達の欲や生き様を集約した展開であり、その頂点に立つものとして秀吉が描かれる、という大きな軸が見えているので素直に一気に観られた映画だったと思う。<以下核心メモ>
秀吉と勝家の対決が軸となるのだが、その間で大きな要素となるのが信長の妹である市。これまた三谷ファミリーというべき鈴木京香が演じている。抜いた眉にお歯黒と不思議な顔立ちになっているのだけど、秀吉の主導権を取らせない為に
手を下す様はベテラン女優ならではの味。そして、最後でそれと対になる様に立つのが、剛力彩芽が演じた三法師の母である松姫。わが息子を織田家の跡継ぎにする為に、死者を連想させる為に好きでは無い川辺に行き、秀吉に三法師を合わせる様に謀った…と語るシーンはゾクゾクした。それを見ると、中谷美紀が演じた寧はシンプルに華やかな女性のポジションであったのだなぁー、と思える。
会議が終ってからの流れが長いなーと観ていたのだけど、その会議を経ての勝家と秀吉の命をかけた駆け引き、更に重ねて腹の探りあいもあっての静かな駆け引き…と、今までの流れを受けて且つその後に続く2人の戦いを感じさせるものがあったので、長いと思った終盤も見終わってみれば必然として納得。高らかに天下取りを寧に語る秀吉、秀吉の振る舞いを踏まえつつ馬上で無言でニヤリとする勝家。やはりいいラストシーンだと思う。エンドロールでは、合戦を示唆する音と勝ち鬨も入っていたしね。
途中、ゲストみたいな感じで西田敏行が出てきて特別出演なのかと思ったら、前作「ステキな金縛り」との繋がりを作ったサービスみたいなものだったのね。