ラッシュ/プライドと友情

テアトル2、評価★★★★★
1976年のF1シーズンで戦いをしていたニキ・ラウダジェームズ・ハントを描いた物語。クライマックスは1976年のドイツと日本でのレースとなるのだが、そこに至るまでの初めて合ったF3でのエピソードを描き、そしてF1へ登るステップを見せる事で、2人の性格や人物像を描くことで、クライマックスの物語でのそれぞれの心の動きが明確に見えるものになっていた。そこは、ノンフィクションからドラマを見せるロン・ハワードの腕前というところか。
とにかく、まるで相反するような性格や言動の2人でありながら、レースで走る事のみでしか表現できない男達のドラマを余す事無く描いているというか。大作でありながら、約2時間というランタイムなので、その密度感は凄まじい。40年近く前の時代の話だけど、どちらの男に感情移入できるか…という見方も有りなのかもしれない。その2人の活躍に華を添え、そして生き方に影響するそれぞれの妻の存在も印象深い。時代故に、まだ表に立つという立場でなくても、それぞれの胸に強くある事を描いていたのも、人間ドラマとして楽しめた要素であると思う。
勿論、レースのシーンは迫力満点。ある意味とても危険な時代のレースを、当時では見られない様なアングルで捕らえた映像にはただ興奮するばかり。勿論、その危険を示すショッキングなシーンもあるのだが。まぁ、なんだかんだ言っても、ティレルの6輪車なんかが映ればワクワクしないわけにはいかない。日本でのレースもあるから"たいれる"の表記込みで。あと、レースシーンはリアスピーカーを含めての空間的な音の演出が、これまた良かった。
とにかく、レースが好きな事を踏まえても、また大好きな映画が増えた…そんな1本だった。<以下核心メモ>
1976年の日本でのF1といえば、大雨のせいでラウダが棄権した事は知っていたけど、ドイツでの事故を経て、妻という守るものの為に敢えて危険を避けた…という描き方は好きだ。そこまでの、ラウダの確立だけで危険を計っていたものが、そこで感情が加わったというか。
ラストシーンは自分のジェットを見るラウダと、何かのパーティで飛行機に乗るハントが、飛行場で合って語るというシーン。下手をするとやりすぎな演出に見えそうなところを、そこまでの話の流れと役者の魅力で、男達の物語の美しい締め括りになっていた。2人のライバル関係と友情が凝縮された様な雰囲気でいいシーンであったと思う。