キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー

テアトル6、評価★★★★★
マーベルシネマテックユニバース新作としてのキャップの2本目。「アベンジャーズ」から直接繋がり、「アベンジャーズ2」への布石になるという事と、前作である「ファースト・アベンジャー」のバッキーがウィンター・ソルジャーとして登場するという基本事項以外は、ほぼ情報を入れずに観に行ったのだが、これがビックリするくらい「ファースト・アベンジャー」からの要素が多くて驚く。
かと言って、WW2を経てきたスティーブの過去を振り返るというものではなく、現代に生きる為に変わろうとする思いと変わらない真っ直ぐな心を描き、そこからアメリカに降りかかる危機をどうかわすのか…という緊張感に溢れるドラマで、136分という時間が一気に過ぎた感じ。
もちろんドラマも巣晴らしけど、現代の軍隊らしい潜入ミッションから格闘にカーチェイスと、見せ場の多いアクションもてんこ盛りで、これ以上無いというくらいの密度。キャップ自身のアクションも、シールドの扱いはもちろんだけど、格闘のカッコよさが随所で光っていた。予告で墜落するヘリキャリアーが流れていたけど、なるほどそういう盛り上げ方だったのか…と終盤は感心するばかり。
とにかく、シールド寄りの話になると思いきや、見事なまでのスティーブ・ロジャース=キャプテン・アメリカの物語。でも、ヒーロー性だけでなくドラマもしっかりした良作で実に満足。<以下核心メモ>
シールド内の反乱分子との戦いの話と思いきや、実はシールドに潜り込んだヒドラとの戦いという、前作を踏まえての実に面白い展開。単なるヒドラの生き残り軍団では無く、ゾラ博士がアメリカによって巨大コンピューターの中で記憶のみの存在として存在していたり、バッキーがゾラ博士の実験で強化されていた事で死なずにウィンター・ソルジャーとして生きていた事とか、前作からのヒドラを踏まえての要素の使い方が丁寧で上手すぎる。前作で、バッキーのみが捕虜になっていた時に別の部屋にいた事なんかを見事に昇華しているというか。
前作からの繋がりとして、驚いたのがペギー・カーターの登場。登場するとはちらりと聞いていたけど、年老いた病床でスティーブと会話するシーンが悲しくも優しいシーンになっていた。
そんなペギーの代わりというわけでもないが、スティーブと行動を共にするのがナターシャ・ロマノフ。今回は髪型を変えていたけど、それがナターシャの元ロシアのスパイとしての陰の強さを表してる以上に、"実年齢は上だけど経験の浅い"スティーブをリードする女性というイメージが強かった様な。2人の関係がクローズアップされていた感はあるけど、ナターシャはバートンとどうなったんだろう…と考えてしまうのは仕方が無い。
今回、キャップのサイドキックとして登場したのがファルコンであるサム・ウィルソン。冒頭のシーンから登場した退役軍人という事で、話には絡むけどそれなりの…と思ったら、特殊なフライトパックを付けての訓練をしていた軍人であり、ラストバトルでは想像以上の活躍をするという。原作コミックにも存在するキャラクターらしいけど、荒唐無稽さとアメリカの軍人というリアリティを見事に落とし込んだいいキャラクターであった。
もちろん、ニック・フューリーも登場するのだが、派手なカーチェイスに死んだふりとか、かなりの活躍。そのニック=サミュエル・L・ジャクソンに対する存在で、シールドに潜り込んだヒドラとして出てくるのが、ロバート・レッドフォード演じるアレクサンダー・ピアース。レッドフォードの魅力ある笑顔だからこそ、悪としての存在が映えるというか。これが、シールドの新型ヘリキャリアーを使った人間の殲滅作戦という狂気を画策しながら、最期には小物らしさが出ていたのも、レッドフォードの演技故だと思える。
今回の映画、前作の要素が多かったけど、終盤で逃亡していてスーツも無かったスティーブが"軍服"として使ったのが、博物館にあった大戦時のユニフォームというのが泣かせる。もちろん、当時で最高でも現代の弾丸は通ってしまうという弱さはあるけど、それだからこそクライマックスでのウィンター・ソルジャーとの闘いが盛り上がるわけで。まぁ、実際には前作のデザインのままでは無かったけどね。当然、リニューアルされた現代版スーツもカッコいいのではあるが。
書き出しても面白いポイントが尽きないこの映画、恒例のエンドロールでのおまけ映像、ヒドラが作ったミュータントであろうか、狭い小部屋で高速で動く男と念動力らしき物を使う少女の存在がどう次に繋がるのか気になる。そして、博物館で展示されていた自分の軌跡を見るウィンター・ソルジャーというよりバッキーで幕となるのだが、こちらもどう繋がる事やら。