キカイダー REBOOT

フォーラム4、評価★★★☆
過去にテレビ番組として放送されていた「人造人間キカイダー」のリメイク作品。オリジナル作品は見た事が無かったけど。
"人造人間"というものを"アンドロイド"と落とし込み、ロボット技術の進化と結びつける導入や設定はなかなか考えられたもの。そして、ジローはマリと共に国のプロジェクトとして作られたアンドロイドという位置付けも、日本的な背景を上手く捕らえながら近未来な舞台となっていて面白い。
色々な点で、近年のライダー映画とは異なるアプローチになっており、ヒーロー映画のアップデートとしての試みが随所に見られるのは素直に嬉しかった。中でも、キカイダーのアクションには目を見張るものが。最初の戦闘でのスーツとCGを駆使した空間的でテンポの良いアクションは、今後の展開を期待させる。CGによる敵メカの動きがややぎごちなかったけど、それが逆にストップモーションらしい雰囲気を醸しだしていて、好みだったのでヨシとする。あと、日本のヒーローものでネックとなる変身について、アンドロイドという設定を生かしての上手い見せ方で一つの回答を示していたのもいいところ。…まぁ、それは別の意味でのモヤモヤも生むのだが。
物語は、光明寺博士の子供達を守る為にジローがキカイダーとしてというものだけど、良心回路を踏まえて心を描いたり、人間やアンドロイドの不完全さを描くという、映画らしい芯の通った展開。今回は脚本にそれなりの時間をかけたのだろうな、とは思わせる。しかし、ミツコが現実ではなくマンガ等に理想の男性像を思い描いているところにジローが…という流れは、なんとなく雨宮版「HAKAIDER」を彷彿としてしまった。
キカイダーという作品を知らず、ライダー以外での21世紀版国産ヒーローものはどうかという視点で観ていたのだけど、結果的には及第点でひとまずは満足というところか。ちゃんと映画になっていたし。<以下核心メモ>
映画という短い時間なので、敵としてあっさりとハカイダーが登場するのだが、それはオリジナルと異なりギルバート博士…プロフェッサーギルが自らをサイボーグとした姿というのが意外な展開か。ギルの扱いも、ARKプロジェクトで光明寺博士の補佐としてアメリカから呼ばれたもので、決して悪の親玉というわけでは無いという。ハカイダーの設定変更はいいのだが、ギルが光明寺博士の創造物に勝つ為であろうとはいえ、自らの脳を組み込む理由や効果が明確で無かったのが残念なところ。あと、ハカイダーショットに魅力を感じなかったのもマイナスポイントか。それにしても、ARKプロジェクトのスタッフは国が後ろについているとはいえ、もう少し悪事を働いても納得できそうな雰囲気だったら尚良かったのに。
今回のキカイダーの変身、キカイダーのボディの状態で表面に3Dのテクスチャを表示させる事で人間体としてのジローになっているという設定は上手い事考えたな、と感心した。が、それ故にあの左手でギターのネックを押さえられるのか、マリ戦でやられて力尽きた時に表示させるという機能が必要なジローに戻ったのは何故か、というモヤモヤが付きまとうわけで。最後に完全に停止した時はキカイダーのままだったから、そちらの方が安定した姿であるのは間違い無いハズなのだが。ジローを演じた入江甚儀は、アンドロイドらしい動きが素晴らしかった。「GHOST IN THE SHELL」みたいに瞬きを抑えれば…とは思ったけど、演出としてそこは意識していなかったのかな?
キカイダーとジローと言えば、姉弟との逃亡での野営シーンにて、「好きなものは?」というマサルの問いかけに対し、音楽でYMOと言い、お笑いと言ってドリフのネタをやったシーンは興醒めした。あそこは音楽と言って、ギター弾かせれば良かったんじゃないか。あと、ギターがエレキだったのだが、電源とアンプは自分の体にあるのかなぁ、と考えてしまうのは仕方が無い。
終盤、先の戦いで倒されたのを見たまま分かれたジローが無事であった事を知りながら、会わずに海外留学に出ようとするミツコだが、ハカイダーを止める為に戦いに行ったのを知り、居ても立ってもいられずに現場に向かう…という展開はいい。が、現場に着いてミツコが戦いの場に飛び出したらハカイダーが戦いを止めて、ミツコとキカイダーの長い話になったのを待ってる様な間抜けさがあったのがなんとも。セットの質感も含め、日本映画の悪いところが少し出た気はした。でも、ラストシーンはセットで背景がグリーンバックでも美しいシーンになっていたんだよね。動かなくなったキカイダーを抱きながら、留学の目的を見出しロボット技術者になると言うミツコの姿に説得力も増すというか。
クライマックスのキカイダーハカイダーのバトル、地下に落ちてからは暗くて単調で飽きが入った…もう少し短くするか、もっと空間的にするかをしてくれれば…と思ってしまった。あと、デンジエンドが派手に見せてるけど、アクションは地味だったなぁー、とかも。
そういえば、エンドロール前に出たタイトル、"REBOOT"ではなくて"REBOOTS"になっていたよな??