スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

テアトル5、評価★★★
バートンとデップのコンビでの新作。元々は、ミュージカルだったものらしいので、映画でもミュージカル仕立てで。
そういう意味ではバートン節は弱いかとも思えるけど、悪趣味な演出等は健在。素材としては、十分合ってるのかもしれない。
前半はまだ、汚いロンドンの街を描くのがメインなのだが、中盤からは連続殺人の様相を呈する感じ。とは言っても、殺人シーンはカミソリでの一瞬での出来事で、尚且つ舞台的に真っ赤な血が吹出すというものなので、思ったよりは怖くない。むしろ、バートンの演出に感心するもので。それよりも、人肉パイのほうが精神的にはクラクラくるものが。
そんなのと対を成すような、途中に挿入されるカラフルなピクニック等のシーンの挿入具合は見事。こういうところでは、バートンらしい映画だな、とは思う。おまけに、このシーンの間のデップの表情も最高だし。
何はともあれ、デップの芸達者が光る映画なので、ファンは必見かと。<以下核心メモ>
判事は狂言回し的な役割だけど、あとの登場人物はみんなすれ違ってる物語。
押しかけてきた物乞いを最愛の妻だと気付かずに一瞬で殺した後、その死体を見て妻だと気付いたときのトッドの怒りと悲しみ、この感情の爆発を見事に描いていたと感じる。そして、その死体を抱いたまま、トビーにカミソリで殺されるというのも、象徴的かつ悲劇的で素直に泣けた。復讐のみに生きる事での代償というか。
それにしても、パイに人を使っている事にトビーが気付くくだりは悪趣味。そこだけ、指入りのパイが出てくるなんて!
結局、船乗りと娘の逃避行がどうなったか…は気になるところだけど、スウィーニー・トッドの物語と考えると、ラストでそこに触れなかったのは正解か。