聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-

テアトル6、評価★★★★
山本五十六を描いた映画なんだけど、その人物を中心として太平洋戦争に突入していった日本を描いたものという事か。有りがちなテロップでの日時表記は避け、台詞のみで状況を語るのだけど時代の流れが判り難いとかいう感覚は無かった。新聞記者役の玉木宏が語る内容で補足していたという感じで。
山本五十六を演じるのは役所広司。まぁ、思った通りの外さない演技でその存在感は十分。逆に、あまりにも順当過ぎて、別作品で同様に上に立つ様なキャラが想起されてしまい、他に演じる人を選べなかったのか…と思っても、役所以外には考えられないからなんとも。脇も、これまた柳葉敏郎をはじめとしての日本を代表する俳優が顔を並べているので、観ていての安定感はさすが。そんな中、玉木宏の高めの声がちょっと気になったところも無いわけでは無いが…。
何はともあれ、戦闘と街中での些細な事象の組み合わせでの物語で、山本五十六の考えと、その時代の人々の持つ空気もちゃんと描けた映画なんではないかと。あと、水饅頭やらお汁粉、そして茶漬け等々の食事シーンも印象深いものであった。キャラクターを描くにも、時代を見せるのにも、これだけ食事が効果的に描かれた映画は久しぶりな気が。
そして、戦闘シーンもなかなかのもの。飛行機のシーンで一部気になった点はあったけど、ほぼ違和感無く描かれていたのには感心するばかり。完全に日本側視点の映像であるのも、この映画のテーマを考えると必要なもので、効果的であったと思う。
尺は少し長いが、変に媚を売らず、人間の織り成すドラマとして思った以上に楽しめたのは何より。<以下核心メモ>
山本家の食卓シーンが2度描かれるが、どちらも食卓には魚が一匹のみでありそれを分け合うという事で、質素な暮らしを見せていたり。
物語は、山本が視察に出向いた時に敵機に落とされ死亡するシーンを丁寧に描いた後で、一気に終戦へ。そこで、徴兵された新聞記者の真藤が戻り、新たな時代を示す記事を書き始めた新聞社の屋上から空襲に焼かれた町を見て…というところで終るのだが、それは次代を継ぐものという事での作品のメッセージなんだろう。真藤が山本に合い、新聞記者として己の目と耳と心で感じることが大事…と諭されるた事を、戦後日本へのメッセージも含んで、という感じで。