ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

テアトル7、評価★★★★☆
長いタイトルだけど、原題も"EXTREMERY LOUD & INCREDIBLY CLOSE"という事でそのままのタイトル。原作本もあり、そのタイトルも映画の邦題と同じなのか。
"9・11テロ"を扱った作品でありながら、その事件にて父親を失った子供の物語。キャスト順の筆頭は、両親を演じたトム・ハンクスとサンドラブロックになっているけど、実質的にはその少年オスカーが主役の物語。
終始、彼の視点で父親との楽しみが描かれ、テロの様子が描かれ、そして父親の残した鍵を巡ってオスカーの調査…という感じ。子供に則した低い視点で物語が紡がれるのだが、それ故に調査の途中で出会った数々の「ブラックさん」を始めとした人達の繋がりが心地いい。その心地よさで、自分を見ていないと思っていた母親との会話まで一気に持っていた演出は素敵。
パンフレットで日本での大震災と比して述べられるとろもあったけど、NHKの大越アナのコラムにもあった"「人との絆」、「つながり」という言葉を安易に使っているのではないか"という反省の弁が、オスカーの行動とその結果で生まれたものを見ると感想として正直なところなのかもしれない。パンフレットと言えば、そのカバー裏がNYの地図になっていてお洒落。
映像としても落ち着いて美しく、展開の素敵な映画だったと思える。<以下核心メモ>
オスカーが見つけた鍵は、最初に会ったアビー・ブラックの夫であったウィリアム・ブラックの父からの遺産であったというのが真実。父の遺品を売りに出したものの中の花瓶に入っていたままで、オスカーの父が譲り受けていたもとう事で。
目指していた鍵の行き先が、オスカーの父からのものでは無かったけど、そこまでに会った様々な「ブラックさん」とのやりとりが彼にとっては大きなのだったという事で。そして、祖母の家にいた声を出せない間借り人と協力しての調査では、今まで怖れていた事に色々立ち向かっていった中での成長の描き方がいい。
その間借り人は、中盤で父と祖母を捨てたと聞いていた祖父。それを声を出さずに演じた、マックス・フォン・シドーの表現の素晴らしい事と言ったら。辛い物語に、適度なユーモアも与えてくれたりと。
自分を見てくれていないと思った母親が、実は彼のしている事に気付いて、その調査内容を調べて訪れでるあろう人たちに、先に会って説明しているという事で、ちゃんと母の強さと愛も描いていた。その先回りの話が出てからの、優しくも可愛らしい笑顔が映えるからこそのサンドラ・ブロックだったんだなぁー、と納得したりとか。
ラストは、父親から出されていた"第6行政区"の答えが、父がお気に入りと言っていたブランコの裏に仕込まれており、以前は嫌がっていたそのブランコを思い切り漕ぐカットで締めているが、青空をバックにしたカットはオスカーの広がりを示しているようで気持ちのいいものであった。