バルトの楽園

テアトル2、評価★★★
史実を映画にしたのだが、適度な映画的脚色もあり、多めの登場人物にもそれぞれの個性をつけていたので、キレイにまとまった映画であった。細かいエピソードを重ねていって、最後に感謝の意を表すための第九の演奏につなげる辺りは実に手堅い。
また、会津出身の所長がその生まれからくる人間性をもって、捕虜に接し、お互いに友情を深めあう姿が殆どイヤミ無く描かれていたのが
好感をもてるところか。冒頭での、他の収容所との対比も含めて。
ただ、文科省文化庁やら赤十字がバックに付いたことで、やや素直過ぎる映画になった感も否めないが。
それにしても、戦場の表現がややチープかなぁ。特に、戊辰戦争会津藩の描き方は、「ここだけアメリカ人が撮ったの??」ってくらいひどいよ。
一番の見所は屋根の上の猫かなぁ〜。<以下核心メモ>
捕虜達の海水浴や作品博覧会など、こんな事があったのかと興味を持って見ることができる。
それも、収容所のあった地元の人達との信頼があり、ふれあいがあったこそだろうと思う。そんな中に、国を越えた恋愛があるのは不思議ではない。たとえ成就しなくても、その思いは素晴らしい事かと。
そう成しえた所長の松江の人柄にもよるが、それを堂々と、そしてたまには飄々と演じた松平健に素直に拍手したい。また、会津人の気骨を違う形で見せた阿部寛にも。
クライマックスは、第九の演奏になるのだが、その演奏が始まった初めのほうで戦争の様子を流したのは何故だろう?眼を病んだ捕虜が、「祖国を思い浮かべる」と言ったセリフの後だけに、余計不思議に思える。その後の様な、ドイツの風景のみを入れた方があのシーンにはふさわしいと思うのだが。
あと、第九を演奏するにあたり、楽器や女声合唱が無いために編曲するくだりは、面白い。