トヨタ iQ 試乗

今年のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞したクルマ。
先日、クルマの販売が開始したので、展示されはじめた実車を拝見。


展示車でパッケージングを確認する限りでは、「無駄に作りを良くした小型車」って感じ。
助手席側のグローブボックスを廃止してのクリアランス確保、9個装備したエアバッグ、ステアリングからのオーディオ操作、15インチのタイヤサイズ、ハロゲンヘッドランプ等々、いわゆるコンパクトカーとは言えない設計の丁寧さで。
そんな感じなので、値段設定が下位グレードから140万,150万,160万という事で、下手するとヴィッツが買えるくらいのレベルというのは変。
実際、ターゲットは若い女性なのだが、販売開始から短い間になるが問い合わせをする客層は年配の方が多いらしい。大きなクルマを持っていて、そのサブとして使いたい…という感じで。


エンジンルームは実にコンパクト。吸気側の経路を上に置いてエンジン自体は下側にマウントしている様で。しかも、デフの取り付け方法を居住スペース確保の為に変則的にしてるとかなんとか。
そんなわけで、前の席は十分な居住スペースを確保。アイポイントも高くないので、結構安定した座り心地。最上位グレードのシートは更に座り心地がいいもので。
そして、問題の後席はやっぱりおまけ程度。助手席側はともかく、運転席側の後は座るのは非現実的。それ以上に、シート
とリアのゲートが近すぎて、乗ったら落ち着かない事は想像に難くない。新採用のリア側のカーテンエアバッグもあるんだけど、それはぶつかった時の安全装備なだけであって、後方からのプレッシャーは厳しそうだ。ただ、リアのシートを畳んでカーゴスペースを作る際に、ヘッドレストをそのシートの間に挟んで格納できるアイデアは○。


試乗したのは、最上位の100G。
1000cc,68馬力のエンジンも、このボディなら十分なもので。ただ、始動時のトルクがもう少しあれば、とは思えた。そういえば、直3のDOHCなんだけど、「OHCでもいいんじゃない?」と、今思った。
変速はCVTらしい退屈なものだけど、悪くは無い。
あとは、いたって普通。思ったよりも普通の乗り心地に、逆に驚く。リアタイアが背中に近すぎる違和感は確かにあるし、小回りの良さも確かにあるんだけど、その他はいたって普通…としかいい様が無い。


鳴り物入りで登場したこのクルマ、思った以上に仕上がりがいい。都会の道路事情なんかを考慮しても、シティコミューターとしての性格を持ったこのクルマは、今後EV化なんかされればまた面白くなると思う。スマートの対抗としての日本メーカーの回答とも取れるか。
ただ、あまりにも丁寧に作りすぎて高くなった値段がネックか。日本には軽自動車という規格もあるし、そちらのほうが諸費用も含めて安くなるというのに。
結局のところ、本来のターゲットとなる若い人向けで無い設定のクルマでなくなった事が、このクルマの泣き所になるんじゃないかと思ってしまったり。